
交通事故に遭ってしまった際、まず頭に浮かぶのが「保険の手続き」です。
一般的に、交通事故の怪我の治療では「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」が使われますが、もしその事故が「通勤途中」や「勤務時間中(仕事中)」に起きたものであれば、「労災保険(労働者災害補償保険)」も選択肢に入ってきます。
「自賠責保険と労災保険は何が違うの?」
「両方使えるの? どちらを優先した方が得なの?」
「整骨院でも労災保険を使って通院できるの?」
このような疑問や不安を抱えている方のために、本コラムでは柔道整復師として11年以上の施術歴があり、1,000件以上の交通事故患者様をサポートしてきた専門的な視点から、自賠責保険と労災保険の違い、メリット・デメリット、そして事故状況に応じた正しい使い分け方を分かりやすく解説します。
【まず結論】事故の状況別・おすすめの保険選択
「長文を読む時間がない」という方のために、まずは事故の状況に応じた結論をお伝えします。
- 自分に過失がなく、怪我が比較的軽度な場合自賠責保険(相手の任意保険)を優先(慰謝料が支払われ、手続きもスムーズ)
- 自分にも大きな過失(不注意)がある場合・自損事故の場合:労災保険を優先(過失による減額がなく、治療費が全額補償される)
- 怪我が重度で治療が長引きそうな場合(長期通院)労災保険を優先(自賠責の限度額120万円を超えても治療を継続できる)
- 相手が無保険、または「ひき逃げ」に遭った場合:労災保険を優先(確実に窓口負担0円で治療を受けられる)
01. 自賠責保険と労災保険の基本概要
まずは、それぞれの保険がどのような目的で作られた制度なのか、基本的な仕組みを押さえておきましょう。
1. 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは?
自賠責保険は、自動車やバイクを所有・運転する際に加入が義務付けられている強制保険です。
- 目的交通事故被害者の生命や身体の損害を最低限保障し、救済すること。
- 対象交通事故によって怪我をした被害者(※加害者自身の怪我は対象外)。
- 補償の原資車両所有者が支払う自賠責保険料。
基本的には「他人の過失(不注意)によって怪我をさせられた場合」に機能する制度です。
2. 労災保険(労働者災害補償保険)とは?
労災保険は、事業主(会社)が従業員を1人でも雇用する場合に加入が義務付けられている社会保険です。
- 目的業務中や通勤途中の事故によって労働者が負傷した場合に、迅速かつ公正な保護を行うこと。
- 対象正社員、契約社員、パート、アルバイトなど、雇用されているすべての労働者。
- 補償の原資事業主が全額負担する労災保険料。
労災事故は、業務命令や仕事の最中に起きた「業務災害」と、出退勤の移動中に起きた「通勤災害」の2種類に分かれます。
02. 自賠責保険と労災保険の決定的な7つの違い
どちらも「事故による怪我の治療費や生活を補償する」点では共通していますが、制度の仕組みや補償範囲には大きな違いがあります。
| 比較項目 | 自賠責保険 | 労災保険 |
|---|---|---|
| 補償対象の事故 | 自動車・バイクが関与する交通事故全般 | 業務中または通勤途中の事故(交通事故含む) |
| 傷害治療の上限額 | 上限120万円(治療費・慰謝料・休業損害の合計) | 上限なし(必要な治療が完治まで支給される) |
| 慰謝料の支給 | あり(1日あたり4,300円〜※計算基準あり) | なし(慰謝料という名目の給付はない) |
| 過失割合による影響 | 被害者に大きな過失(7割以上)があると減額 | 過失相殺がない(自分の過失が多くても減額されない) |
| 窓口での治療費負担 | 原則0円(保険会社が一括対応する場合) | 原則0円(労災指定院の場合) |
| 休業補償の給付割合 | 直近の収入をベースに100%補償(上限あり) | 給付基礎日額の80%(休業給付60%+特別支給金20%) |
| 加害者の有無 | 相手(加害者)が存在することが前提 | 単独事故(自損事故)や相手が無保険でも使用可能 |
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03. 補償内容の深掘り比較:どちらを使うかで何が変わる?
患者様にとって特に重要な3つのポイントを深掘りして解説します。
1. 治療費の「120万円の壁」
自賠責保険には、傷害(ケガ)による補償額に「120万円」という上限が設けられています。この120万円には、治療費だけでなく「交通費」「休業損害」「慰謝料」もすべて含まれます。
そのため、怪我が重度で治療が長引いたり休業損害が高額になったりすると、120万円の枠を使い切ってしまう(枠あふれ)リスクがあります。
一方、労災保険には治療費の上限がありません。医師や柔道整復師が「治療が必要」と認める期間であれば、治療費は全額支給され続けます。
2. 「慰謝料」が出るか出ないか
大きな違いとして、労災保険には「慰謝料」の給付項目がありません。
自賠責保険では、事故によって受けた精神的・肉体的苦痛に対して「傷害慰謝料(1日あたり4,300円〜)」が支払われますが、労災保険から支給されるのは、あくまで「実費としての治療費」や「休業による減収の補償」に限られます。
3. 「自分の責任(過失割合)」の影響
自賠責保険の場合、自分に大きな過失(70%以上)があると、受取額が20%〜50%減額されてしまいます。また、自分が100%悪い自損事故(電柱への衝突など)では、相手の自賠責保険を使えません。
これに対し、労災保険には過失相殺(過失による減額)がありません。ご自身の不注意で起きた事故であっても、業務中や通勤途中であれば、過失割合に関係なく治療費や休業給付が全額補償されます。
04. 自賠責保険と労災保険の「併用」はできる?
「両方の保険から二重にお金をもらうこと」は法律上禁止されています(支給調整)。
例えば、自賠責保険から治療費を出してもらっている期間について、同時に労災保険から治療費を受け取ることはできません。
ただし、「給付項目を分けて併用する」ことは可能です。
賢い併用例:休業補償の組み合わせ
休業補償においては、以下のような併用が認められています。
- 自賠責保険から休業損害として100%分の補償を受け取る
- 労災保険から労災独自の「休業特別支給金(20%)」を受け取る
労災保険の休業給付(合計80%)のうち、「特別支給金(20%)」は二重取り調整の対象外とされています。そのため、自賠責保険で休業損害を受け取りつつ、労災から20%の特別支給金を受け取るという手続が可能です。
05. 整骨院で労災保険を使って治療を受ける流れ
厚生労働省から認可を受けている「労災指定整骨院」であれば、窓口負担0円で交通事故の施術・リハビリを受けることが可能です。整形外科などの病院に通院しながら、整骨院へ併院することも認められています。
通院開始までの4ステップ
- 勤務先(会社)へ事故報告仕事中または通勤途中の事故であることを伝え、労災保険を使用する旨を報告します。
- 整形外科を受診まずは病院・整形外科で医師の診察を受け、診断書を取得します。
- 整骨院へのご相談・ご来院労災指定整骨院へお越しください。お身体の状態を検査し、適切な施術計画を立てます。
- 所定の「労災用紙」を提出:会社から用意してもらった労災用紙(様式第16号の5(2)など)に必要事項を記入し、整骨院へ提出します。これで窓口負担0円で施術を開始できます。
06. よくあるトラブルと対処法
トラブル①:会社が「労災を使わせてくれない(労災隠し)」
「事故対応が面倒だから自賠責だけで処理してほしい」と会社から言われるケースがあります。しかし、通勤災害の場合、会社の保険料が上がることは原則ありません。会社が申請を拒む場合は、管轄の労働基準監督署(労基署)へ直接ご相談ください。
トラブル②:相手の保険会社から「治療の打ち切り」を打診された
自賠責保険の120万円枠に近づくと、相手方の保険会社から治療の中断を打診されることがあります。このような場合でも、労災保険へ切り替えることで、必要な期間まで治療を継続することができます。
07. まとめ:一人で悩まず専門家にご相談ください
交通事故の怪我、特に「むちうち(頚椎捻挫)」は、事故直後は症状が軽く見えても、数日〜数週間後に強い痛み、頭痛、めまい、痺れとなって現れることが多々あります。
どの保険を選択するのがベストなのかは、事故の状況(仕事中か通勤中か)、お互いの不注意の度合い(過失割合)、お怪我の程度によって一人ひとり異なります。
当院では、柔道整復師として11年以上の施術歴と、1,000件を超える交通事故対応実績に基づき、患者様のお身体の施術はもちろんのこと、自賠責保険や労災保険の複雑な手続き、整形外科との併院調整までトータルでサポートしております。
「仕事帰りの事故でどう対応していいかわからない」
「相手の保険会社とのやり取りに疲れてしまった」
「痛みが引ききらないので、しっかり手技療法を受けたい」
どのようなお悩みでも構いません。北九州市で交通事故の怪我や保険手続きにお困りの方は、ぜひ一度、当院の無料相談をご利用ください。あなたのお身体と心の負担を解消できるよう、全力でサポートいたします。
交通事故の施術について、お気軽にご相談ください
自賠責保険の適用で窓口負担は原則0円です。通院中の整形外科との併用、 転院のご相談も承っています。相談だけのご利用でも構いません。
実際の通院記録
当グループへ通院された方の記録です。事故の状況・初診時の所見・施術内容・ 通院回数まで記載しています。
- 追突事故

追突事故によるめまい
30代女性(事務職・デスクワーク従事)
赤信号で停車中に追突され、ふわふわとした浮動性めまいと頭重感が続いた30代女性の症例です。頭部CTや平衡機能検査では異常なしと判定されました。
- 施術期間
- 約120日間
- 通院回数
- 42回
- 追突事故

衝突事故による背部痛
30代男性(デスクワーク)
信号待ち中に追突され、肩甲骨の内側から背中中央にかけて強い痛みが出た30代男性の症例です。深呼吸時の胸背部の圧迫感も伴っていました。
- 施術期間
- 約3ヶ月
- 通院回数
- 35回
